※書き掛けです。
※お約束してた方全員を出すところまでには全く至りませんでした。
※その時に確か、お子さんをお借りしていいと言われたと、脳内で都合良く捏造してます。勝手にお借りして申し訳ない。
※話した時の配役で悪役、という立ち位置の方もいたため、そのような形で出てきます。主人公:アンちゃんと敵対してしまう正当化出来る理由もちゃんと用意しながら書いていたのですが、終わりまで書けなかった為に、中途半端な感じです。
背後です。覚えていますでしょうか、星廻りの館で戯れに話したもしも話。
あれをがっつり脚色して、お話を書こうとしていたのが出て来たので、載せてしまおうかと思います。
書き掛けですのでえ、ここで!?みたいなところでぷつんと切れますし、正直なんじゃこりゃ、ですが。
記録として。残させて頂きます。
※お約束してた方全員を出すところまでには全く至りませんでした。
※その時に確か、お子さんをお借りしていいと言われたと、脳内で都合良く捏造してます。勝手にお借りして申し訳ない。
※話した時の配役で悪役、という立ち位置の方もいたため、そのような形で出てきます。主人公:アンちゃんと敵対してしまう正当化出来る理由もちゃんと用意しながら書いていたのですが、終わりまで書けなかった為に、中途半端な感じです。
背後です。覚えていますでしょうか、星廻りの館で戯れに話したもしも話。
あれをがっつり脚色して、お話を書こうとしていたのが出て来たので、載せてしまおうかと思います。
書き掛けですのでえ、ここで!?みたいなところでぷつんと切れますし、正直なんじゃこりゃ、ですが。
記録として。残させて頂きます。
夢みたいな光景だった。
「アン、貴女に伝えなければならないことがあるの」
しんしんと雪が降り積もる音がする。あまり厚くない壁に囲われた部屋はひどく冷え切っていて、吐く息は視界を覆うほどに白い。
それに紛れる白銀の長く清らかな髪は、月光に青く染められている。悲しげに、けれど何かを決意したように細められた双眸は、翡翠のそれのように澄んでいる。見知ったはずの少女が、なんだか今日は一段と大人びて見える、とアンは思った。
「貴女にしか、頼めないことなの」
イブは杖を振る。与えられるだけの力を、これから力強く駆けなくてはいけない彼女に注ぐために。
「お願い、ね」
ごめんなさい。
そう謝る言葉が、なんだか寂しい。
私は、大丈夫だから、だから、そんな顔をしないで。 そう言ってあげたかったのに、上手く言葉にならない。
空舞う雪は、まだ止みそうになかった。
***
「今日は、冷えますね」
「うん……さむい、と…ねむるのも、しんどい、な…」
二人は目の前に広がる白銀の世界を淡々と眺めていた。そこで話される会話は穏やかで、彼女達二人が物騒な武器など携えて居なければ、それは平和的で、清算された光景だった。
何もかもを覆い尽くす黒衣は、二人の纏う柔らかな雰囲気を損ねてしまう程に刺々しい。
「いい、の?」
「…何がです?」
ほんの僅か、二人の間に生まれる沈黙を縫って、濃いターコイズの髪色をした長身の青年が、ぼそりと尋ねた。
「あの子と、親しかった、でしょう?」
普段は話すことさえ無精する青年の表情は相も変わらず無表情なままだったが、その瞳は何やら、仲間の、友人に対する心配の念に揺れていた。
その意を受け取ったのだろう、ミルクティー色の髪を柔らかく一箇所で縛り、ほわりとした笑顔が似合いそうな白い顔を悲しげに歪めた女性は、そのままふるふると首を振った。
「『あれ』を手に入れてしまっているのなら、奪わなければいけませんから」
まるでそれが自分の役目だと言うように。女性は、アイビーは静かに目を閉じた。
それを哀れだと、シンには言うことが出来ない。
「行きましょう」
下を向いて少し落ちていた細いフレームの眼鏡を、くいっと持ち上げると、アイビーは言った。
目の前には変わらず、寒々しくも美しい世界が広がっていた。
…さて、少なくともアイビーは知らない事実が、実はそのほんのすぐ側で起きていた。
「ああ、アイビー様…!今日も素敵!」
呟く言葉はもう恋する乙女のそれだ。赤茶の髪にキャスケット帽を被せ、木の影から覗くそれらは愛らしい要素に溢れている。その腕に抱き締められている黒猫は、彼女の瞳に浮かぶハートマークに気付いているのかいないのか、ただ雪降る寒さにふるふると小刻みに体を震わしていた。
「眼鏡くいっ、だって!もうすっごくカッコイイ!素敵!綺麗!美人!!」
きゃあきゃあと、まるで白馬の王子様にでも出会ったような高揚感に、その白い頬が染まる。しかしそれは恋慕より、もっと純粋な感情であるのだろう。憧れのような親愛の情。けれどそれは、彼女を動かすには十分な理由だった。
「このレナ、必ず貴女のお役に立ってみせます!アンちゃんなんかに負けないくらい!」
恋する乙女ことレナは、ライバルとも言える名をつぶやきながらも、右の拳をぐっ、固めてその決意を示した。
***
アンは大好きな少女から受け取った『もの』を落とさぬように気をつけながら、息も絶え絶え走っていた。
危険だと、あれ程言われたのに。アンは顔を歪める。友達だと思っていた女性に戦いを挑まれ、ようやく事態の重要さを飲み込んだ。その心は今、ショックと戸惑いと混乱とで、揺れている。
冬の森は空気が痛いくらいに研ぎ澄まされていて、無防備な耳は触れなくてもわかるほどキンキンに凍っている。お陰で、高い耳鳴りと体が上下するごとに早くなる鼓動ばかりが響く。ここは何処だろう。獣道へと足を進める中、ほんの一瞬途切れた思考が、太い木の根に足を取られることを許してしまった。叩きつけられて、息が詰まる。親友のナイフに裂かれた左肩が、今更ズキズキと痛んだ。
立てない、とアンは思った。何も考えず、今はこのまま眠ってしまいたい、と。
疲労が溜まっていたのだろう、何せ慣れない旅路を行き、かれこれ七日経つ。しかも追っ手が仲の良かった女性とくれば、精神的打撃もひどいはずだ。
雪がじわじわと、体の熱を奪って行く。指先は赤を通り越して真っ青に染まっていた。立ち上がらねばいけないと思うのに、逃げなくてはいけないのに、芯まで冷え切った体は、言うことを聞かない。
その時だ。
シャリ、と地面を伝って微かに聞こえた音に、アンの心臓は大きく跳ねた。
追いつかれたのだろうか。落ち着いて来た動悸が、また戻ってくる。体を無理矢理起こしてみるものの、まるで自分のものではないように、言うことを聞かない。焦れば焦るほど、上手くいかなかった。なんとか近くの茂みに身を隠すが、足音はすぐ近くだ。そしてこちらに真っ直ぐと向かってくるのがわかる。パニックになりそうな頭をどうにか抑え込んで、アンは息を殺した。無意識にごくり、と喉が鳴る。
「もー!だから言ってるじゃん!ボク、つまみ食いなんてしてないってばー!」
ーー脱力。
考えていた展開よりもズレた言葉は、想像していた彼女のものより幾分か高い、少女の声だった。
「えー、だって口元におやつにってとって置いた筈のチョコレートがついてましたよ?」
続いて聴こえた声はどうやら男のものだが、やけに丁寧さの欠片もない間延びした敬語だ。
足音は二人分。この二人は何者だろうと更に会話を追う。
「あ、あれはね!そう、チョコレートの雨が降ってきてね、こう上を向いたらポタって」
「わー、チョコレートの雨ですか、凄くロマンチックですね。ところでヨシノ様、あんまりシラを切るなら今晩のご夕食はお預けにさせて頂きますよー?」
「あ、あー、えーと、…あれ?」
言い訳を探す少女の言葉が、不自然に途切れた。座り込むような気配を、思ったよりも間近に感じる。
「? どうなさいましたか?」
「…! ティノル、これ!」
少女が息を飲み、緊迫した声を出した。アンは下手に動くことも出来ず、驚愕の先を凍えた耳で必死に拾う。
「血の、痕…?」
そうしてはっとした。しまった、先ほど転んだ時、ナイフで裂かれた場所が雪に微かとはいえ付着したのだろう。彼らが敵か味方か、判別のつかないアンは再び早鐘を打つ心臓をぎゅっと服の上から押さえつけて耐えるしかない。
「まだ、新しいものですね…。狩人の仕留めた獲物、だといいのですが」
「ううん。雪についた足跡は、人間のものだけ。だから、この近くで、誰か怪我してるんだ…」
足跡という言葉に、アンは自らの失敗を悟る。
「これ、そこの茂みに続いて……!!」
少女が、言い終わる前に走り出したのがわかる。そしてそれは、まっすぐにこちらに向かう。アンは無理矢理身体を起こし、『もの』をしっかりと抱え込んで、護身用にと持たされた魔力の宿る竪琴を構えた。がさり、という物音と共に、アンはその姿を初めて捉える。
想像していた以上に、小柄な少女だ。鮮烈なオレンジ色の長い髪は高い位置で一つに括られ、活発な印象のあるくりくりした大きな瞳は今、真剣な光を灯している。
そして彼女はアンを見るなり、その黒い目を見開き、ひどく辛そうな顔をした。まるで、アンの負った怪我を、自分が負ったかのような。
「大丈夫!?ひどい怪我…!」
そのまま膝をついて、アンの傷を労わるように、手を伸ばす。アンは思わず身を捩らせて、それを拒んだ。
「さわら、ないで…」
数日前のことが思い出される。大の仲良しだったアイビーが、自分に剣を向ける、その姿が、頭から離れない。
優しくされることさえ、今はこわい。
それなのに、少女はアンの感じてる痛みを一緒に耐えるような顔をして、真っ直ぐに見つめてくる。
「…怖かったね」
事情もまだ知らないはずなのに、震えるアンのことを、少女はそう言って、ぎゅっと優しく抱きしめた。
「大丈夫。…大丈夫だよ」
温かい。アンははっとした。それからじわじわと自分の冷たい身体に染み入る熱に、視界が滲む。
温かい。
少女はそれ以上は何も言わずに、背中をぽんぽんとさすってくれる。それに段々と嗚咽が止まらなくなる。
怖かった。ずっと。だから言って欲しかったのだ……嘘でもいい。誰かに。大丈夫だと。安心していい、ここに居てもいいのだと。
しんとした雪山に、アンの泣き声が響く。
それが王家の次期世継ぎ候補であるヨシノと、アンの出会いだった。
(続く)(だったらよかった)
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